道中・案内(イベント概要・運行記録)
川崎市・那覇市友好都市提携30周年および首里城正殿復元完成を記念し、令和8(2026)年10月4日(日)に東海道川崎宿にて開催された「川崎宿江戸上り行列」。176年ぶりに東海道へ響いた琉球宮廷音楽「路次楽」(首里王府阿波連路次楽御座楽保存会)、国の重要無形文化財「組踊」保持者・宮城茂雄氏(特命 儀衛正)や仲村渠達也氏(特命 掌翰使)の特別出演、使節団本隊を担った川崎沖縄芸能研究会、そして幻の装束・道具を再現製作した沖縄・川崎の匠たちが結集した歴史絵巻の運行概要・出演記録をご案内します。
令和8(2026)年10月4日(日)に開催された「川崎宿江戸上り行列」は、沿道にお集まりいただいた多くの市民・来場者の皆様の温かいご声援のもと、無事盛況裡に終了いたしました。心より厚く御礼申し上げます。当日の進行ルート概要および出演者・伝統の匠の紹介をアーカイブ記録として掲載しております。
10月4日(日)行列運行概要・進行ルート(実施記録)
令和版・川崎宿江戸上り行列として、琉球使節団が出立したのは、砂子(いさご)一丁目交差点。 元和9(1623)年、川崎宿発祥の二町(砂子・新宿)のひとつとして歴史を開いた「砂子」。 かつては大名が宿泊した「中の本陣」や、街道の物流・人馬継ぎを統括した「問屋場(といやば)」が置かれた宿場町の中枢でした。 先陣を切る路次楽の音色とともに、街道の記憶を呼び覚ます歴史絵巻の幕が上がりました。
砂子を進む行列に、宮城茂雄氏扮する先触れの特命使者「儀衛正」が合流しました。東海道川崎宿の歴史保存と文化振興に情熱を注いだ故・斎藤文夫氏ゆかりの街道沿道を背景に、「儀衛正 附」が脇を固める中、「儀衛正」が王権の象徴「赤御涼傘(あかうりゃんさん)」とともに隊列先頭へ加わりました。先陣の路次楽隊と合流し、本舞台となる東海道を一幕の「動く浮世絵」へと変貌させる歴史劇が開幕しました。
「儀衛正」率いる使節団一行が到着したのは、「東海道かわさき宿交流館」。 かつての宿場町の歴史と文化を今に伝え、地域交流の拠点として親しまれる同館は、斎藤文夫氏を中心とする市民有志の熱意に後押しされて誕生しました。道中を歩んできた一行は、この交流館前で時を越えた歴史ロマンが結実する「結びの一幕」を迎え、東海道川崎宿交差点への到達をもって、本絵巻は幕を閉じました。
出演者・衣裳道具制作
本イベントを華やかに彩った「首里王府阿波連路次楽御座楽保存会(しゅりおうふ あはれん るじがく うざがく ほぞんかい)」は、琉球王国の幻の宮廷音楽である「路次楽(るじがく)」と「御座楽(うざがく)」の復興・保存・継承を目的として活動している伝統文化団体(沖縄県選択無形民俗文化財)です。
1879年の琉球王国終焉以降途絶えていた路次楽を1977年に手探りで復活させた阿波連本啓氏(川崎で芸歴開始)の遺志を継ぎ、沖縄より来川。川崎宿始まりの地・砂子を出立し、初再現となる路次楽装束を身にまとって東海道に古式の調べを響かせました。
令和8年7月に国の重要無形文化財「組踊」保持者(総合認定)に認定された組踊の名手。本プロジェクトでは、正殿に続き南殿北殿復元完成の暁には川崎を訪れるであろう江戸上り行列本隊の先触れの使者として、本絵巻限定の特命を帯びた「儀衛正(ぎえいせい)」に扮して出演しました。史実の儀衛正は、宿駅の発着や街道行進において路次楽隊や儀仗の隊列を統括・指揮(下知)した要職です。
東海道川崎宿の歴史保存に生涯を捧げた故・斎藤文夫氏ゆかりの街道沿道にて行列に合流し、東海道かわさき宿交流館を目指しました。宮城氏は2013年の川崎沖縄芸能研究会「組踊研修部」発足時より立方指導講師を務め、地謡指導の仲村渠達也氏とともに川崎で32年ぶりの組踊上演を成功させた実績を持ち、街道を舞台と見立てた本絵巻屈指の一幕を創出しました。
公式サイトを見る(ryukyu-miyagi.jp) ↗琉球古典音楽野村流音楽協会師範、一般社団法人伝統組踊保存会伝承者。国立劇場おきなわを中心に活躍する実力派実演家。川崎沖縄芸能研究会「組踊研修部」発足時より地謡指導を務め、宮城茂雄氏(立方指導)とともに長年にわたり川崎での古典芸能継承に尽力しています。
本プロジェクトでは、本絵巻限定の特命として親書(国書)を携行する使節官人「掌翰使(しょうかんし)」に扮して行列へ参列しました。史実の掌翰使は、国王の親書を携行し幕府との文書外交を司った、名護親方程順則ら文章に長けた官人が務めた要職です。また、同日開催された川崎市・那覇市友好都市提携30周年記念式典では、格式高い琉球古典音楽の祝賀演奏を披露しました。
1949(昭和24)年に発足し、神奈川県および川崎市の重要無形民俗文化財(沖縄民俗芸能)の指定・認定を受ける伝統芸能団体です。
本プロジェクトでは、出立時から路次楽隊の直後を行進する「使節団本隊(旗・武具持ち・楽人・隊列)」と、旧東海道沿道より宮城茂雄氏(儀衛正)の周囲を固めて合流する「儀衛正 附」の2手に分かれて隊列を構成。400年の歴史的血脈と川崎に根付く伝統芸能の気概をもって、令和の江戸上り行列全体の威容と運行を支えました。
国指定重要無形文化財「組踊」の道具・衣裳製作者。国選定保存技術保持者であった故・島袋光史氏や上運天綾子氏に師事し、高度な製作・修復技術を継承。人間国宝の歌舞伎俳優・坂東玉三郎氏が新作組踊『聞得大君誕生』で着用した荘厳な衣裳(黒地満面印金牡丹文様衣裳など)を手掛けたことで広く知られ、2026年5月には沖縄県立博物館・美術館にて「組踊衣裳展」を開催するなど、琉球古典芸能界の第一線で活躍しています。
本プロジェクトでは、川崎沖縄県人会有志と連携し、限られた錦絵等の絵画資料を精読しながら地道な素材選定と手縫いを重ね、史上初となる「江戸上り時の路次楽装束」の再現製作に心血を注ぎ、東海道での初着用を実現させました。
国選定保存技術「組踊道具・衣裳製作修理」の保存技術者であり、組踊道具・衣裳製作修理技術保存会の舞台道具職人。故・島袋光史氏に師事し、沖縄県恩納村の「裕工房」を拠点に、組踊や琉球古典芸能の舞台を支える道具全般を手掛ける全国唯一の専門職人です。1866年の尚泰王冊封時に披露された幻のからくり花火「大団羽」を絵図から復元するなど、失われた王朝文化の復興・継承にも尽力しています。
本プロジェクトでは、組踊道具・衣裳製作修理技術保存会に所属する道具伝承者の宮城 優子 氏、金城 小百合 氏とともに製作チームを結成。旗持ちや長柄付き儀礼用武具持ちの方々の頭部を格調高く彩る「ハチマチ(冠)」の製作を担い、絵画資料に描かれた琉球使節の気品ある威容を現代に再現しました。
「沖縄八重山民謡三味線教室 哲研」代表。西表島出身。川崎を拠点に八重山古典民謡の継承・指導に尽力し、川崎市生活文化会館(てくのかわさき)等の三線講師も務める唄者・指導者。長柄部分の製作加工を担いました。
公式サイトを見る(慶田城哲芳三線研究所) ↗
川崎市多摩区で本格三線の製作・修理を行う「前之浜三線工房」の職人。「かわさきマイスター」に認定された父・前浜政次氏のミリ単位に及ぶ木工技術を受け継ぎ、親子二代で伝統の技を未来へ紡ぐ後継者として武具造形を担当しました。
